100mile madness!!

雰囲気で山を走っています。

20180915-17 信越五岳100mile 2/2

part.1 の続き。後半戦です。

 

◾︎黒姫→笹ヶ峰(113k) 21:54 / 312位

黒姫エイドを出発すると、関門時間を既に諦めている人達もいる中で、とにかく全力で林道を歩く。もがく。
そんな私を見て、「まだ行けますか?」と聞いてくるランナーもいたが、正直そんなことわかりません。でも動けるなら頑張った方がいいですよ、と伝えました。
自分の足はしっかり前に出てるし、下りは走れているので、「これ行けるんじゃね?」という気がしてきた。
しかし、順調に進んで吊り橋まであと少しというところまで下りてくると、見たくなかった光景が広がっていました。渋滞。。。

ここの吊り橋は定員"2名"のか弱い橋でして、一度に2人ずつしか渡れないことになっているのです。
110kと100Mのランナー、そして100Mのペーサーが関門時間ギリギリのコアタイムに殺到してしまったことで、完全にキャパオーバーの状態になってしまったようです。

少なくとも50人以上並んでるから、軽く見積もって渡るまで30分は掛かりそう。時計を見るとちょうど21時間を指していました。

"吊り橋渡って、残り3km?"
"発電所の激登りもある!その後も結構アップダウンなかったっけ?"
"絶対間に合わないよね!"
"救済措置ないの?(ない)"

"おつかれさまでした!"

悲観的ムードが漂う吊り橋手前の現場。
自分も例外ではなく、"良いペースで来れてたけど、この渋滞も考慮するなら、やっぱり黒姫19時間って読みは当たってたなぁ。。。"などとレースを振り返り始めてしまう始末。ちょっと想定外な出来事だったけど、これは受け入れるしかありません。

そして、ようやく橋が見えてきました。橋を渡ったランナーが全力で走っていくのが見える。。。あと、諦めているランナーもチラホラ。

自分の番が来ました。時計を見ると21時間27分が経過。残り33分・・・
一緒に渡った人は全力で走っていった。自分はというと、ある程度プッシュしつつ、先を見据えて無理はしない。それで関門に引っかかったとしても仕方ない(ここで消耗して潰れてしまっては意味がない)というスタンスでした。
今となっては中途半端だったなぁと思いますが、結果的に5分30秒前に笹ヶ峰関門通過!首の皮一枚繋がりました。


笹ヶ峰エイドは15分後に出発しないとアウトとのことで、時間を目一杯使ってカレーライス、うどんなどを補給。制限時間2分前に慌ただしく出発。

 

◾︎笹ヶ峰→大橋林道(131k) 25:40 / 307位

なんとか笹ヶ峰関門を通過することができたことで、周囲を見渡すと安堵の雰囲気が伝わってきます。完走が見えてきたんじゃないかと。

笹ヶ峰牧場から乙見湖へ下ったところで日が暮れました。2回目の夜を迎え、早速睡魔が襲ってきます。

ここは夢見平という美しいトレイルが広がっているはずですが、夜なのでよくわかりません。それどころか自分が今どの辺を歩いているのかわからず、だんだんと意識が朦朧としてきた。。。夜の夢見平は良い夢を見られそうにありません。

前後に人が居なくなり、心細い気持ちでトボトボ歩いていると、ようやく西登山道入口のエイドが見えてきました。ここから黒姫山の登りが始まります。

黒姫山は連日の雨で泥濘が酷いことになっており、特に下りが全然走れない。

ようやく大橋林道のエイドが近づいてきた時点で、既に25時間30分を過ぎている。あれ?もしかして結構時間ギリギリじゃね?

回転の遅くなっている脳をフル稼動させて、歩きながら設定タイムの逆算を始めます。

  1. フィニッシュ制限時間は32時間。
  2. 戸隠スキー場(143k)からゴールまで少なくとも3時間30分掛かるので、28時間30分にエイドを出発しないとヤバイ。
  3. 28時間で戸隠スキー場に到着したい。
  4. この大橋林道は131km地点。

というわけで12kmを1時間50分で進む必要があることがわかりました。全歩きだとちょっと間に合わない。。。

完走予定タイムの30時間どころか制限時間まで余裕が全く無い状況ということを理解。ヤバイヤバイ。

エイドで一息つきたいところだけど、一分一秒がもったいないので、スルーしました。

 

◾︎大橋林道→戸隠スキー場(143k) 28:05 / 283位

以前自分が110kに参加した時は、ロードと遊歩道を繋いで戸隠神社奥社の随神門に向かうルートだったと記憶してましたが、戸隠キャンプ場を突っ切るルートに変わったのかな?広々とした牧場を歩くのはちょっと果てしなく感じました。

遊歩道に入り、ペースを上げていきたいところですが、泥濘が酷くてなかなか走れません。

随神門を通過し、鏡池(見えない)を越えると、霧も濃くなってきて眠くなってくる。

ようやく戸隠スキー場に到着したのは28時間5分。そして、気付いてしまいました。。。

戸隠スキー場からゴールまで3時間30分では絶対辿り着けない!

最早一刻の猶予もありません。が、このエイドもスルーしてラスボスの瑪瑙山を乗り越えられるほど簡単な山ではないので、温かい戸隠そばを一杯頂いて出発しました。

ゴール制限時間まで残り3時間45分。

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◾︎戸隠スキー場→瑪瑙山 29:40 / ???位

戸隠スキー場からゴールまで3時間30分では辿り着けないと直感した理由は、戸隠スキー場に近づくにつれてだんだんとエグみを増す泥濘に足を取られ始めたからです。これ瑪瑙山どうなっちゃってんの?

悪い予想はすぐに現実のものとなりました。

今までの泥濘が可愛いレベル。時には膝まで泥濘に埋まり、所々で悲鳴が聞こえます。(もしかしたら楽しんでる人もいたかもしれませんが・・・)

足を取られて手も泥濘に突っ込んでしまったり。まるで田植えです。しかし、我々は田植えをしている場合ではないのです。※(参考)レース後のシューズ

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刻々とリミットが迫ってきますが、瑪瑙山の高さは変わらないのでとにかく登るしかありません。ここまで143km走ってきて、体力も限界に近い中での瑪瑙山の直登は本当に厳しかった。

あまりの辛さに記憶が飛びました。気が付いたら瑪瑙山山頂にいました。

寝ながら登ってたのか、何にせよラスボスを登り切りました。完走は見えたのか・・・残り2時間20分。

 

◾︎瑪瑙山→Goal(160k)

瑪瑙山からの強烈なダウンヒル。一旦下り切ったところに案内の方がいて、ここから1.2kの最後の登り、3.2k先が最終エイドとのこと。

瑪瑙山で登り終わったと思ってたのにまだ終わってなかった!

林道区間が10kmだと勘違いしていて、10kmをキロ何分で走ればいいか計算していたけど、まさかの誤算!登り切ってから最終エイドまでは、とにかく必死に駆け下ります。ホントにヤバイ!

そして飯綱山登山口エイドに到着したのが30時間53分8秒。残り7.4kmを66分52秒。

とにかく1秒でも惜しいのでエイドには寄らず駆け抜けます。

"66÷7.4"など疲労困憊の頭で暗算出来るわけもなく、そして実は7.4kmではなくもう少し距離が残ってるんじゃないかという疑心暗鬼もあり、「キロ9分はまずい。キロ8分で走り続ければ行ける!」と自分を奮い立たせて最後の林道でプッシュしました。

時計を見るとキロ7分で走れている。この調子で行きたい!すると、私が良いペースで走れているので、周りのランナーも同調してきます。

"このペースで行けば絶対間に合いますよ!" と先頭を引っ張りました。

が、皆走り出すと速いので、早々に置いていかれました(泣) まるでBBQの着火剤のような役回りですが、悲しんでる場合でも、ゴールを前にして燃え尽きている場合でもない。ただひたすら燃え続けるしかないのです。

どのくらい走ったか、時計を見ると既に160kmを超えています。あと何キロ残ってるんだろう?不安で仕方ないですが、出来ることは走り続けることしかありません。

そして、遂に残り1.1kmの案内が。制限時間まで20分ほど残ってます。間に合った〜!

周りのマイラーと健闘を讃えながら最後のゲレンデを下りました。

 

31:49'14 / 257位

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振り返ると、序盤の絶不調から始まり、吊り橋事件からの猛ダッシュ、そして田植えからのラストスパート、、、色々あり過ぎて本当に疲れました。諦めかねない場面に幾度となく遭遇し、それでも最後の最後まで諦めなかった結果、100マイラーになれました。これが100mileレースなんですね。

圧倒的に練習量が足りてない中で、この結果は奇跡です。"100mileに奇跡などない"、という指摘(悪い意味ではありません)も頂いたのですが、今回のレースでは「完走に繋がる一本の糸を"奇跡的に"最後まで手繰り寄せ切った」という表現が自分の中でしっくり来ています。

 

そして、忘れてはならないのは、最後まで完璧にサポートしてくれたアシスタントの存在ですね。

エイドでは麦茶のボトル補給、豆乳やプロテイン、うどんからゆで卵まで、食べたいもの・飲みたいものを全て用意してくれてました。これらの補給なしに完走はありえなかったと思います。本当に感謝しかありません。ありがとう!

 

翌日の閉会式にて完走バックルを石川さんから手渡しでいただきました。信越五岳、本当に素晴らしい100mileレースでした。

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